おちいし司法書士事務所@福岡県久留米市のブログ

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いよいよ抵当権設定登記抹消登記手続請求事件の裁判、そして登記!

こんにちは、福岡県久留米市のおちいし司法書士事務所の落石憲是です。

 

休眠抵当権を裁判を利用して抹消する手続きを

 

と書いてきましたが、今日は最終回!

 

訴状は、以下のとおり。

 訴  状

 

平成28年●月●日 

●●簡易裁判所 御中

原告訴訟代理人司法書士 落石 憲是(職印)


当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり


抵当権設定登記抹消登記手続請求事件


訴訟物の価格   金295円
貼用印紙額   金1000円

 

第1 請求の趣旨

1 被告らは、原告に対し、別紙物件目録記載の土地についてなされた別紙登記目録記載の抵当権設定登記の明治36年3月21日混同を原因とする抹消登記手続をせよ。

2 訴訟費用は、原告の負担とする。


との判決を求める。

 

第2 請求の原因

1 別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)は、原告の所有である(甲1号証)。

2 本件土地には、別紙登記目録記載の●●法務局●●支局明治31年●月●日登記(以下「1番抵当権」という。)及び明治33年●月●日受付第●号(以下「2番抵当権」という。)の訴外Aを抵当権者とする抵当権設定登記が記載されている(甲1号証)。

3 抵当権者訴外Aは、明治36年3月21日、本件土地の所有権を売買により取得した(甲2号証)。

4 1番抵当権及び2番抵当権は、同日、混同によって消滅した。

5 1番抵当権及び2番抵当権の抹消登記を経ないうちに、抵当権者訴外Aは、大正●年●月●日に死亡した。そして、その後数次の相続を経て、抵当権者の地位は別紙相続関係図記載の被告らに相続された。
 なお、相続の経緯は、別紙相続関係図記載のとおりであり、抵当権者訴外Aの相続人は他にはいない。

6 よって、原告は、被告らに対し、明治36年3月21日混同を原因とする1番抵当権及び2番抵当権の抹消登記手続を求める。


証拠方法

甲1号証 登記事項証明書
甲2号証 閉鎖登記簿謄本


付属書類

1 訴状副本 ●通
2 甲号証写し ●通
3 固定資産税評価証明書  1通
4 相続証明書        一式
5 訴訟委任状  1通

(別紙)当事者目録 省略

(別紙)物件目録 省略

(別紙)登記目録 省略 

 

訴状を提出後、書類の重さを確認して、
予納郵券の組み合わせの連絡をいただくことになりました。

 

数日後、裁判所から連絡があり、
予納郵券の額は合計で、79,070円!!!

はじめてこんなにたくさんの切手を買いました(笑)

※ちなみに、裁判終了後、14,000円ほど戻ってきましたが、
 500円とか100円の切手が大量にあって、どうやって処理するか思案中です(笑)

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相手方が多数のため、初回期日は約2か月半後が指定されましたが、
奇跡的に28人に1回で送達できたそうで
2か月半も開ける必要はなかったと、書記官さんからお聞きしました。

 

裁判自体は、ものの数分で終了し、答弁書の提出もなく
その日に判決となりました。

 

これで終わりとはならず、
判決文を全員に送達されて、2週間経過して判決が確定となります。

 

2週間経過後、確定証明書(印紙は150円分)を取って、ようやく登記手続き。

 

申請書は、以下の通り。

 

 登記申請書

 

登記の目的 1番、2番抵当権抹消

 

原因 明治36年3月21日 混同

 

権利者(申請人)X

 

義務者 A
   (上記相続人)省略

 

添付書類 登記原因証明情報(判決正本、確定証明書)(特例)
     代理権限証書(特例)

 

平成●年●月●日申請 ●●法務局 ●●支局

 

代理人 福岡県久留米市日吉町16番地1 ダイマンビル6階
    司法書士 落石憲是
    電話番号 0942-32-0020

 

登録免許税 金1,000円


不動産の表示 省略

 

念のため、参考資料として、閉鎖謄本のコピーはつけましたが、
戸籍一式はつけずに申請しました。
判決理由中に記載があるので。

 

※ちなみに、裁判所に提出した戸籍は原本還付しました。
 全部コピーするのは大変でした(^^ゞ

 

以上で無事、休眠抵当権を抹消することができました。

 

戸籍取得費や裁判の予納郵券などがあるので、
供託して簡易な手続きで抹消登記することと比べると
数倍費用がかかりますね。

 

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どういう原因で休眠抵当権を抹消するか?

こんにちは、福岡県久留米市のおちいし司法書士事務所の落石憲是です。

 

前回の「休眠抵当権の抵当権者(個人)が知っている人だったら?」のつづき。


裁判をして、休眠抵当権を抹消することに決めることはいいけど、
考えなければならないことがあります。

 

どういう理由(登記原因)で抵当権を抹消するか?

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通常の住宅ローンの抵当権だったら、

完済したら、「弁済」「解除」

保証会社の抵当権だったら、「主債務消滅」

という理由で抹消します。

 

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しかし、今回の抵当権は、昔々のもの。

書類が残っている可能性はほとんどないでしょうから、
時の経過によって、「時効消滅」したことを利用するのが一般的でしょう。

 

抵当権などの担保権の消滅時効の期間は20年です。(民法167条2項)

第167条(債権等の消滅時効
1.債権は、10年間行使しないときは、消滅する。
2.債権又は所有権以外の財産権は、20年間行使しないときは、消滅する。

 

でも、今回のケースでは抵当権が2件あって、
それぞれ時効の起算日が違っているので、
抹消登記を2件申請する必要があります。

 

ほかに何かないかと古い登記簿(閉鎖登記簿謄本)をよ~~くみてみたら、

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なんと明治36年3月21日に、抵当権者がこの土地を買っていたことを発見!!!

(「売買」とあるけど、「代物弁済」だったのかもしれませんね。)

 

だから、消滅時効でなく、「混同」という理由で抹消することにしました。

これだと、2件の抵当権を1つの申請書で抹消登記をすることができるんです。

 

実際、裁判の期日に裁判官も

「ふつうは時効消滅で抹消されることがほとんどで、混同は珍しいですね」

とおっしゃられましたが、

上記のような理由だとご説明しました。

 

つづきは次回!

 

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休眠抵当権の抵当権者(個人)が知っている人だったら?

こんにちは、福岡県久留米市のおちいし司法書士事務所の落石憲是です。

 

これまでに2度、休眠抵当権のことを書きました。

 


いずれのケースも何度も手続きをさせていただきましたが、
今回、はじめてのケースに出会いました。

 

 

最初は、親から子への生前贈与のご相談でした。 

登記情報を確認すると、たしかに親名義の不動産でしたが、
1筆だけ、明治時代に登記された抵当権が2つ(どちらも同一人物が抵当権者)
登記簿に残ったままになっていました。

 

そのことをお客さまにご説明すると、

「その方は知っています。
 曾祖父にあたる人です。」

とおっしゃったのです。

 

それを聞いた私はビックリ(@@)

土地の所有者の方が昔の抵当権者のことをご存じであることは
ほとんどないだろうと思っていました。

だって、100年くらい前の人のことですから。

しかし、今回のお客さまのようにご先祖様だったらありえますね。

 

お客さまは、今回、この休眠抵当権の抹消もご希望でした。

さて、どうするか?

 

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以前書いたケースでは、

供託して抹消登記をしましたが、

抵当権者を知っていると聞いたからには、この方法は使えません。

抵当権者の相続人を探す必要があります!

抵当権者は江戸時代のお生まれでしたので、
今、戸籍を請求しても廃棄されて取れなかったと思います。

でも、お客さまが30年ほど前に別の相続登記をされたときの戸籍を
保管されていて、その中に必要な戸籍があったので、
相続人を調べることができました。

 

総勢28名!!!

 

抵当権を抹消する方法は、

  1. 原則どおり、抵当権者全員と土地の所有者とで共同申請
  2. 裁判をして、勝訴判決をもとに土地の所有者だけで申請

の2通り。

 

1.だと、(抵当権の登記済証はないででしょうから、)
相続人全員に印鑑証明書をご準備いただく必要がありますし、
全員に法務局から事前通知がなされます。

事前通知はだれか一人でも期限までに法務局に返信しなければ
やり直しになってしまうリスクがあります。

(法務局からも嫌がられるでしょうね。)

 

※事前通知のことはコチラをお読みください。


だから、2.の裁判手続きを利用して手続きをすることにしました。

 

いきなり裁判所から訴状が届いたらびっくりされるでしょうし、
気分を害されて訴状を受け取らない人がいるかもしれません。
すると、手続きが進みません。

 

そこで、この抵当権者の相続人全員あてに
抹消登記手続きへの協力依頼の手紙を送りました。

 

数か月かかりましたが、全員から協力していただけるとの返事をいただき、
いよいよ裁判。

 

つづきは、次回!

 

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